『静岡の病診連携(イーツーネット)』
2009.09.22 火曜日今回は、医師会が中心となって患者情報の共有システム構築や専門医とかかりつけ医との連携(イーツーネット)に取り組んでいる静岡市の事例についてご紹介いたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼【 市民アンケート結果 ! 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
静岡市は、2003年に旧静岡市と旧清水氏が合併してできた人口約71万人の政令指定都市である。年齢階級的にはほぼ全国平均に近いが、やや高齢者が多く狭い平野部に多くの市民が住むなど日本の近未来の地方都市像と類似している。
1998年に市民にかかりつけ医や在宅医療などについてのアンケートを行ったところ、以下のような結果が得られた。
かかりつけ医は、「身近でなんでも相談できるが夜間休日の対応や専門的な診療に欠点があり」、病院は、「待ち時間が長いや往診しないことなどが欠点」として指摘された。
この結果を踏まえて急変時に対応できるように患者情報を医療機関が共有する在宅支援システムやかかりつけ医と病院医師の2人の主治医が役割分担しながら継続的に一人の患者を支えるイーツー(医師-2)ネットという活動を開始した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼【 在宅医療! 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1998年に市民 約700人に行ったアンケートの結果、在宅医療の不安に関して、夜間休日の対応(23%)、病状の悪化(16%)など急変時の不安が多かった。これらの在宅医療への不安を解消するために下記のような在宅連携システムがつくられた。
1. 在宅看取り当番医制度(グリーンカードシステム)
1998年から始まったかかりつけ医と当番医の連携システム。かかりつけ医は,まず患者宅に医療情報を保管し、医師会に患者登録を行う。患者の容体が急変した時にかかりつけ医が往診できな場合、消防本部から当番医に連絡が入り当番医が患者宅に往診する仕組み。
現在、約60診療所が30人程度の患者を登録。
2. 在宅患者病状急変時対応システム(イエローカードシステム)
1999年に始まったかかりつけ医と病院の連携システム。あらかじめかかりつけ医は、在宅患者の医療情報を患者が希望する病院に伝えておく。患者の容対が悪化した時にかかりつけ医が診察できなくても、消防本部が患者のイエローカードを確認できれば、患者の医療情報のある病院に搬送する仕組み。
このシステムに関しては、受け入れる病院側も事前に患者情報を把握しているのでスムーズに受入られる。また、搬送先が決まっているので救急車も困らない。など肯定的な意見が多い。
3. 在宅安心連携システム(シルバーカードシステム)
2006年に開始。急変時に緊急往診あるいは、訪問看護を希望する在宅患者に対応する制度。かかりつけ医は、事前にシルバーカードに患者情報を記載し、医師会を通じて協力する開業医や訪問看護ステーションに配布。
患者の急変時にかかりつけ医が対応できない場合に消防に連絡すると当番医と訪問看護ステーションに連絡が入り、出動することとなる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼【 病診連携(イーツーネット) !】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前述のアンケートの病院・診療所に関する結果は以下のとおりである。
○ 診療所の利点
身近でなんでも相談にのり、往診してくれる。
○ 診療所の欠点
夜間・休日の急変時の対応ができない
専門的な治療や高度な設備がない
○ 病院の利点
病状急変時の対応や設備が整っている
○ 病院の欠点
待ち時間が長い。気軽に相談できない。
往診しない。主治医が変わる。
市民アンケートの結果から診療所と病院のそれぞれの欠点を解決するために診療所と病院が役割分担して連携することが重要と考えられ、病院主治医とかかりつけ医が一人の患者を連携して継続的に支えるイーツー(医師-2)ネットの活動が始められた。
これにより、病院はかかりつけ医との連携により多くの患者の紹介が得られ、病状が安定した患者はかかりつけ医に逆紹介することで効率の良い診療を行えるというメリットがある。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼【 病診連携の問題点 !】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
イーツーネットは、複数の病院ではじめられたがいくつかの問題点が明らかにまった。
○ 病院側の問題点
1. 病院毎の取り組みの差が大きい
2. 逆紹介先が知り合いや専門に偏る
3. 患者に対する責任感が強く、かかりつけ医に紹介しない
4. 開業時に患者を自分の医院に誘導する
○ 診療所の問題点
1. 病診連携に対する理解不足
2. かかりつけ医としての医療連携レベルの向上への取り組み不足
○ システムの問題点
1. 紹介状の種類が多く煩雑である
2. 報告書など病院医師の負担が大きい
3. 病診連携部門の人員不足と理解不足
○ 患者の問題点
1. 急変時への対応の心配
2. 担当医との信頼関係が強い
3. 病診連携について知らない
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼【 問題点への対策!】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
病診連携をスムーズに行うために以下のような対策がとられた。
○ 各病院との定期協議や病診連携総会、勉強会の開催
顔の見える関係づくりや医療レベルの向上を図る
○ 病院月別病診連携集計表
各病院、各科の実態が把握でき、紹介率などを参考に患者を紹介できるメリットがあった。
○ 連携患者安心カードシステム
病診連携患者の急変時にいつでも医療情報がある病院で診療を受けることができる制度。病院医師も安心して逆紹介できると好評で、順調に登録患者が増加した。
○ 広報活動
パンフレットやリーフレットを作成したり、市民講演会や公開講座を行っている。
上記の対策を行った後、一定の成果は上がったが以下のようないくつかの問題は残った。
○ 熱心に病診連携に取り組んだ病院や診療科では、外来患者が増え勤務医の外来負担が過剰となった。
○ 病院からの逆紹介が紹介もとの診療所に行われずに一部の専門の診療所に偏ることで病診連携が途絶える例が多かった。
○ 病院間で病診連携への取り組みの差が大きくなった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼【 クリティカルパスを用いた病診連携の試み !】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
従来のイーツーネットの取り組みは、一定の成果を上げたが前述のような問題点が残った。これらの問題点を解決しさらに病診連携を進めるために、病診連携者の病院受診のサポートやクリティカルパスなどを取り入れた新しいイーツーネット病診連携システムが考案された。
疾患ごとの連携パスを用いて病院担当医とかかりつけ医が患者情報を共有する。定期紹介時にはかかりつけ医は日常診療の変化や検査結果を記入し、病院担当医は精密検査結果や治療方針、助言などを逆紹介書に記載する。
その他に患者の利便性に配慮してかかりつけ医から病院の外来予約が可能とした。
病気ごとの連携パスを使った例:
1. がん病診連携ネットワーク(S-NET)
2007年に公的病院5施設が参加して診断から緩和医療までの全過程の病診連携を視野に入れた連携システム(S-NET)が実現し、がんの全過程の医療連携や他職種の連携が始まった。
がんの外来化学療法や在宅緩和ケアなどでは、連携施設間の診療レベルの均一化や他職種との緊密な連携が必要で、今後のS-NETの発展が期待される。
2. 脳卒中ネットワークシステム
2006年に県立総合病院との脳卒中発症患者のネットワークを開始した後、赤十字病院と脳卒中リスク患者のネットワークも加え、予防から発症時の対応、リハビリテーション、在宅復帰までを視野に入れたシステムが始められた。2007年には静岡、清水の公的病院6ヵ所とリハビリテーション病院が参加する広域病診連携システムに発展した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼【 まとめ !】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
病診連携や在宅医療の改革を行うためには、地域の医療機関と多くの職種をまとめる中核的な組織が必要である。静岡では医師会が中心となって活動を推進した。病院の指導的な立場の方々の理解と医師会との信頼関係も欠かすことができない因子であった。
何よりもこれらの活動が市民の意向に沿う試みであったことが、多くの方に指示された理由であった。
静岡市の事例は、他の地域での病診連携の参考になるのではと思います。また、患者情報の共有はFAXで行われているので、今後はさらなる効率化のためにITの活用が期待されます。











